当科の特徴

低侵襲手術

われわれは、当院での胸腔鏡下(きょうくうきょうか)手術(video assisted thoracic surgery 略して VATS ; バッツと呼んでいます)を1991年に導入いたしました。

図1をご覧ください。
これらはいずれも左側の手術をする際のイメージです。左側の手術を行う際には、右を下にした横向きの体位で行ってます。したがって図の上側は頭側、下側は足側、向かって左がお腹側、右が背中側となります。

1991年までは図1の一番左側に示しますよう30cmほどの逆S字型の皮膚切開を設けて手術を行っておりました。その切開方法を後側方開胸といい「標準開胸」と呼ばれておりました。いわゆる術者の両手が入る大きさの傷です。

1992年からは、徐々に傷を小さくしていき2ケ所への集約を試みました。われわれはこの方法を「二窓法」と命名しました。図1の真ん中に相当します。最初のうちは片手の入る大きさでしたが、かろうじて指が入る程度にまで徐々に傷を小さくしてきました。しかし、このころは開胸器という肋骨と肋骨の間を拡げる器械を用い、術者が直接覗き込むことを併用して内視鏡手術を行っておりました。これを「直視併用」といいハイブリッドVATSと表現する方もいらっしゃいます。この方法は、器械で強制的に肋骨と肋骨の間を広げるため術後の痛みが長引く傾向にありました。

1995年以降は、手術器具の開発や胸腔鏡の細径化・高画質化に伴い開胸器を用いずに、すなわち直視併用をせずに胸腔鏡下手術を行うようになりました。これは「完全鏡視下(現在では完全胸腔鏡下が正しい表現です)」や「ピュアVATS」と呼ばれております。

1997年には径3mmの胸腔鏡を導入し、背中は刺し傷のみで全ての手術を胸側から行う手術「One window & one puncture method(一窓法の一種)」を開始しました。本法は2001年からは、さまざまな条件が整った場合のみこの方法を原発性肺癌の手術に用いております。

2010年には胸腔鏡用の刺し傷も作らずに、胸腔鏡も手術の傷から挿入する「One window method(一窓法の一種)」という「単孔式」内視鏡手術も行っております。

近年、「Reduced Port Surgery」という表現が散見されております。「減孔式」とも訳すことができるこの手術法は、手術に用いる傷の数の減少や手術器具の細径化などを併用することにより術式の低侵襲化、創整容性の向上を図る試みであると杏林大学外科学教室(消化器・一般外科)教授の森俊幸先生はご説明されております。われわれが長年にわたり追求してきた道もまさに「Reduced Port Surgery」であり、これからもその低侵襲化、創整容性を追求していく所存です。

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